マイクロマシン/MEMSを取り巻く経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信します。
1.IMF日本の経済成長率の予測を下方修正
IMF(国際通貨基金)は、4月11日、2011年及び12年の世界の経済成長率の修正版を発表しました。これは、1月の予測を修正したものです。
日本の経済成長率は、2011年は1.4%と予測しています。これは、前回1月の予測より0.2%下方修正しています。また、2012年の成長率は2.1%と予測していますが、前回1月より0.3%上方修正しました。IMFは、今回の日本の地震は甚大なものではあるが、世界経済に与える影響は限られたものであるとしています。
世界全体の成長率は、2011年に4.4%、2012年は4.5%と予測しましたが、1月の予測と同じとなっています。この内、先進国の2011年の成長率は2.4%としましたが、1月の予測より0.1%下方修正しています。ただ、2012年の成長率は2.6%と0.1%上方修正しました。一方、途上国の成長見通しは、2011年、12年とも6.5%としており、前回予測を修正していません。
参考:
http://www.imf.org/external/pubs/ft/survey/so/2011/RES041111A.htm
2.月例経済報告(4月13日)
内閣府は、4月13日、月例経済報告を発表しました。
4月の月例経済報告では景気の基調判断について、「景気は、持ち直していたが、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。」としています。基調判断については、前月までの「持ち直しに転じている」から6カ月ぶりに下方修正しました。
「先行きについては、当面は東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれる。その後、生産活動が回復していくに伴い、海外経済の改善や各種の政策の効果などを背景に、景気の持ち直していくことが期待されるが、電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅れ、原油価格上昇の影響等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である」としています。
また、「政府は、東日本大震災の影響等を踏まえ、国民生活及び経済活動の安定に総力を挙げて取り組む。このため、被災地への支援のための補正予算を早急に編成する。日本銀行に対しては、引き続き政府と緊密な情報交換・連携を保ちつつ、適切かつ機動的な対応によって経済を下支えするよう期待する」としています。
参考:
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2011/0413getsurei/main.pdf
3.3月の企業物価、上昇
日銀は、4月13日、3月の企業物価指数(速報)を発表しました。
3月の国内企業物価は、前年同月比で2.0%上昇しています。上昇は6カ月連続です。また、前月比でも0.6%上昇しました。
前年同月比で上昇した主なものは、石油・石炭製品(+17%)、鉄鋼(+11%)、非鉄金属(+10%)等となっており、世界的な価格上昇が主な原因と考えられます。東日本大震災の影響は、まだそれほど大きなものとは言えないものと考えられます。
参考:
http://www.boj.or.jp/statistics/pi/cgpi_release/cgpi1103.pdf
4.3月の消費者態度指数、落ち込む
内閣府は、4月19日、3月の「消費者動向調査」の結果を発表しました。
それによりますと、3月の消費者態度指数(季節調整値)は、38.6であり前月に比べて▲2.6ポイント低下しました。
「消費者態度指数」とは、今後半年間における消費者の意識を表す指標です。「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費材の買い時判断」などについて消費者の意識を点数化して加重平均したものであり、50が善し悪しの判断目安となっています。
この内訳を見ますと、震災前(3月11日までに回収したもの)は39.1であったのに対し、震災後は38.3と悪化しています。
東北地方については、震災前が38.5であったものが、震災後は36.8と大幅に悪化しました。
参考(正誤表):
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/1103sinsai.pdf
5.3月の貿易黒字、大幅減
財務省は、4月20日、3月分の貿易統計(速報)を発表しました。
3月の貿易黒字は2千億円となり、前年同月比で黒字幅が79%減少しました。黒字は2カ月連続となります。輸出額が5.9兆円で同▲2.2%の減少、輸入額が5.7兆円で同12%の増となっています。
輸出額の減少したものとしては、自動車が前年同月比で▲28%減、船舶が同▲10%減、半導体等電子部品が同▲7%減等となっています。
同日、平成22年度分の貿易統計(速報)も発表しました。22年度の貿易黒字は5.4兆円で前年度比4%の増となりました。輸出額は67.8兆円(対前年度比15%増)、輸入額は62.4兆円(同16%増)となっています。輸出の増大した主な品目は、自動車(対前年比17%増)、鉄鋼(同25%増)等となっています。一方、輸入の増大した品目は、原粗油(同14%増)、鉄鉱石(同86%増)、液化天然ガス(同24%増)等となっています。
参考:
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2010_4-3.pdf
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2011_03.pdf
6.OECD、日本の消費税率20%が必要と提言
OECD(経済協力開発機構)は、4月21日、「対日審査報告書」を発表しました。
それによりますと、東日本大震災に対応するため公的支出の増加が必要であるが、このような支出は歳出の組み換え、歳入の短期的な増加により賄われるべきであるとしています。具体的には、予備費の活用、公共投資の復興への転用、子供手当の上乗せ延期、法人税率の引き上げ延期等を挙げています。
また、厳しい財政状況に対応するため、中期的には、歳出抑制としては社会保障改革、歳入側としては消費税率の引き上げが必要としています。消費税率については20%程度まで引き上げることが求められるかもしれないとしています。
参考:
URL
7.09年度の温室効果ガス、京都議定書の目標を達成
環境省は、4月26日、2009年度の温室効果ガス排出量(確定値)を公表しました。
それによりますと、2009年度の温室効果ガスの総排出量は12億900万トンで、京都議定書の基準年(CO2については1990年)に比べて4.1%の減少となりました。また、2008年度に比べて5.6%の減少となっています。
また、京都議定書に基づく吸収源活動の吸収量は4,700万トンです。これは、基準年総排出量の3.7%に相当する値となっています。温室効果ガスの減少量が4.1%ですから、合計で7.8%という値になります。
京都議定書では、日本は基準年に比べて6%の減少(2008年~2012年)することとしていますが、この2つを合計すると単年度では基準が達成できたことになります。なお、京都議定書では京都メカニズム(海外からの排出量購入)も減少量に加えることができることとなっていますが、日本政府の京都メカニズムの目標は1.6%としています。
参考:
http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=17384&hou_id=13722
8.経済産業省の主な経済指標(鉱工業指標調査 2010年3月速報分 2011年4月28日)
経済産業省は、商鉱工業及びサービス業など幅広い分野にわたって統計調査を実施しており、それらの調査分析結果について取りまとめた統計をホームページ上に公表しています。これは鉱工業製品を生産する国内の事業所における生産、出荷、在庫に係る諸活動、製造工業の設備の稼働状況、各種設備の生産能力の動向、生産の先行き2カ月の予測の把握を行うものです。3月分の概要(速報)は以下の通りです。
-急激に低下した鉱工業生産―
・今月は、生産、出荷、在庫が低下、在庫率は上昇であった。
・製造工業生産予測調査によると、4月5月とも上昇を予測している。
・生産は、東日本大震災の影響により急激に低下したものの、先行きについては回復していく見込みである。
【3月の生産・出荷・在庫動向】
(1) 生産
3月の生産は、前月比▲15.3%の低下(前年同月比は12.9%の低下)となり、指数水準は82.9(季節調整済)となった。生産の低下に寄与した業種は、輸送機械工業、一般機械工業、化学工業(除、医薬品)等であった。品目別にみると、普通乗用車、駆動伝導・操縦装置部品、小型乗用車の順に低下に寄与している。
(2) 出荷
3月の出荷は、前月比▲14.3%の低下と2カ月ぶりの低下 (前年同月比は▲11.8%の低下)となり、指数水準は85.3 (季節調整済)となった。出荷の低下に寄与した業種は、輸送機械工業、一般機械工業、化学工業(除、医薬品)等であった。
(3) 在庫
3月の在庫は、前月比▲4.3%の低下と4か月ぶりの低下(前年同月比は3.4%の上昇)となり、指数水準は97.6(季節調整済み)となった。在庫の低下に寄与した業種は、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業、一般機械工業等であった。
3月の在庫率は、前月比4.0%の上昇(前年同月比は4.9%の上昇)となり、指数水準は108.5(季節調整済み)となった。
【製造工業生産予測調査】
製造工業生産予測調査によると、4月は前月比3.9%の上昇、4月は同2.7%の上昇であった。4月の上昇は、一般機械工業、輸送機械工業、電気機械工業等により、5月の上昇は、一般機械工業、情報通信機械工業、化学工業等による。3月の実現率は▲19.8%、4月の予測修正率は▲15.9%となった。
参考:
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
9.3月の失業率、横ばい
総務省は、4月28日、3月分の労働力調査の結果(速報)を発表しました。
3月の完全失業率は4.6%で前月に比べて横ばいとなりました。ただ、東日本大震災の影響で、岩手県、宮城県、福島県では、労働力調査の実施が困難となっており(3県の全国に占める割合は概ね5%)、3月分以降については、当面、当該3県を除く値です。
また、同日、厚生労働省は3月分の一般職業紹介状況を発表しました。それによりますと、3月の有効求人倍率は0.63倍で、前月に比べて0.01ポイント上昇しました。
上記については、併せて22年度の値も発表になっています。
平成22年度の平均の完全失業率は5.0%であり、前年度に比べて0.1ポイント低下しています。また、平成22年度の有効求人倍率は0.56倍で、前年度に比べて0.11ポイント上昇しています。
参考:
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10.2009年度のエネルギー消費は、前年度比で2.2%減少
資源エネルギー庁は、4月26日、2009年度のエネルギー需給実績(確報)について公表しました。
2009年度の最終エネルギー消費は、対前年度比で▲2.2%減少しました。ただ、1990年度比では3.6%の上昇となっています。
エネルギー起源のCO2排出量は、エネルギー消費の減少を受けて、対前年度比▲5.5%減少しています。(1990年度比では+1.5%)。
産業部門のエネルギー消費は前年度比で▲1.9%の減少(90年度比では▲12%)。民生部門の消費は同▲2.7%(同+32%)、運輸部門は同▲2.1%(同5.8%)となっています。
90年以降は、産業部門のCO2削減量が大きくなっています。最終エネルギー消費の部門別の割合を見ますと、産業部門の割合が1990年度は50.3%でしたが、2009年度では42.8%と大きく減少しています。これに対し、民生部門の割合は90年度が26.5%でしたが、09年度は33.6%と大きく伸びています。また、運輸部門も23.2%の割合が23.6%と伸びています。
参考:
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11.日銀、11年度の経済成長率を0.6%に大幅下降修正
日銀は、4月28日、経済・物価情勢の展望(「展望レポート」)を発表しました。これは、前回1月の展望を修正したものです。
それによりますと、11年度の日本の実質GDP(実質国内総生産)の伸び0.6%と予測しました。これは、前回1月時点での予想1.6%から、東日本大震災や原発事故の影響を踏まえて、大幅に下方修正したものです。
ただ、12年度のGDPの伸び率は2.9%と予測しており、前回1月の予測2.0%より上方修正しています。
また、消費者物価指数(除く生鮮食品)については、11年度は0.7%上昇すると予測しています。これは、1月の予測0.3%より上方修正しています。
参考:
http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1104a.pdf