マイクロマシン/MEMSを取り巻く経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信します。
1、1~3月期のGDP、上方修正
内閣府は、6月9日、1~3月期のGDP(国内総生産)の改定値を発表しました。今回の改定値は2次速報値で、前回5月19日発表の1次速報値を修正したものです。
それによりますと、この期間の実質GDPの伸び(季節調整値)は前期比でマイナス0.9%となりました。この値は1次速報値と同じですが、年率に換算すると▲3.5%の減となり、1次の値▲3.7%減よりマイナス幅が減少しました。
参考:
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/__icsFiles/afieldfile/2011/06/08/main_1.pdf
2、消費者心理、改善
内閣府は、6月9日、5月の「消費動向調査」の結果を発表しました。
消費者心理を示す一般世帯の「消費者態度指数」(季節調整値)の5月の値は34.2であり、前月比1.1ポイント上昇しました。4か月ぶりに改善したことになります。
「消費者態度指数」は、「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4つの項目について、今後半年間の見通しを5段階で評価してもらって集計するものです。この指標は、個人消費の先行指標になるものです。
5月の調査では、4つの指標全部について改善が見られました。この内、「耐久消費財の買い時判断」は2.6ポイントの改善、「暮らし向き」は1.6ポイントの改善と上昇幅が大きくなっています。
参考:
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2011/1105honbun.pdf
3、国際通貨基金、日本の消費税上げを提言
国際通貨基金(IMF)は、6月8日、日本との年次協議の結果を発表しました。
それによりますと、日本の現在の消費税率5%を2012年には7~8%に引き上げることを提案しています。国際機関が、特定の国に対し、増税時期や増税額を具体的に示して提言するのは異例です。
国際協力開発機構(OECD)も4月21日に発表した「対日審査報告書」の中で、「消費税率は20%程度にまで引き上げることが求められるかも知れない」としており、国際社会は日本の財政赤字に対し、強い懸念を示しています。
参考:
http://www.imf.org/external/np/ms/2011/060711.htm
4、5月の貿易収支、赤字幅拡大
財務省は、6月20日、5月分の貿易統計(速報)を発表しました。
5月の貿易収支は8,500億円の赤字であり、2カ月連続の赤字となります。赤字幅は、統計のさかのぼれる1979年以降、09年1月の9,700億円の赤字に次ぐ過去2番目の赤字となります。
輸出額は4.8兆円であり対前年同月比▲10.3%の減少となり、これで3カ月連続の減少となります。輸出の減少額が大きいのは、自動車(▲39%の減)、半導体等電子部品(▲19%の減)、自動車の部分品(▲19%の減)等となっています。東日本大震災の影響を受けて企業の生産が多きく落ち込んだことが原因です。
一方、輸入額は5.6兆円となり、対前年同月比12.3%の増加となりました。増加額が大きいのは、原粗油(+31%)、液化天然ガス(+33%)、非鉄金属(+30%)等となっています。
参考:
http://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/gaiyo2011_05.pdf
5、月例経済報告(6月20日)
内閣府は、6月20日、月例経済報告を発表しました。
6月の月例経済報告では景気の基調判断について、「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にある中で、このところ上向きの動きがみられる。」としています。基調判断については、4か月ぶりに上方修正しました。
「先行きについては、サプライチェーンの立て直しが進み、生産活動が回復していくに伴い、海外経済の穏やかな回復や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害及び原油高の影響に加え、海外経済の回復がさらに穏やかになること等により、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である」としています。
また、「政府は、「政策推進指針」に基づき、大震災がもたらした制約を順次、確実に克服するとともに、日本経済の潜在的な成長力を回復するよう取り組む。このため、平成23年度第1次補正予算の速やかな執行等により、震災からの早期立ち直りを図る。日本銀行に対しては、引き続き政府と緊密な情報交換・連携を保ちつつ、適切かつ機動的な対応によって経済を下支えするよう期待する」としています。
参考:
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2011/0620getsurei/main.pdf
6、経済産業省の主な経済指標(鉱工業指標調査 2010年5月速報分 2011年6月29日)
経済産業省は、商鉱工業及びサービス業など幅広い分野にわたって統計調査を実施しており、それらの調査分析結果について取りまとめた統計をホームページ上に公表しています。これは鉱工業製品を生産する国内の事業所における生産、出荷、在庫に係る諸活動、製造工業の設備の稼働状況、各種設備の生産能力の動向、生産の先行き2カ月の予測の把握を行うものです。5月分の概要(速報)は以下の通りです。
-回復しつつある鉱工業生産―
・今月は、生産、出荷、在庫が上昇、在庫率は低下であった。
・製造工業生産予測調査によると、6月、7月とも上昇を予測している。
・総じて見れば、生産は日本大震災の影響から回復しつつある。
5月の生産・出荷・在庫動向
(1) 生産
5月の生産は、前月比5.7%の上昇と2カ月連続の上昇 (前年同月比は▲5.9%の低下)となり、指数水準は88.8 (季節調整済)となった。生産の上昇に寄与した業種は、輸送機械工業、一般機械工業、化学工業(除く、医薬品)等であった。品目別にみると、普通乗用車、小型乗用車、普通トラックの順に上昇に寄与している。
(2) 出荷
5月の出荷は、前月比5.3%の上昇と3カ月ぶりの上昇 (前年同月比は▲8.0%の低下)となり、指数水準は87.2 (季節調整済)となった。出荷の上昇に寄与した業種は、輸送機械工業、一般機械工業、情報通信機械工業等であった。
(3) 在庫
5月の在庫は、前月比5.1%の上昇と2か月連続の上昇(前年同月比は7.1%の上昇)となり、指数水準は103.2(季節調整済み)となった。在庫の上昇に寄与した業種は、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業、化学工業(除く、医薬品)等であった。
5月の在庫率は、前月比▲4.9%と3カ月ぶりの低下(前年同月比は10.4%の上昇)となり、指数水準は118.7(季節調整済み)となった。
製造工業生産予測調査
製造工業生産予測調査によると、6月は前月比5.3%の上昇、7月は同0.5%の上昇であった。6月の上昇は、輸送機械工業、情報通信機械工業、電気機械工業等により、7月の上昇は、輸送機械工業、情報通信機械工業、一般機械工業等による。5月の実現率は0.6%、6月の予測修正率は▲1.7%となった。
参考:
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
7、特許出願、減少
特許庁は、6月30日、年次報告書を発表しました。
それによりますと、日本の特許庁への2010年の出願件数は34.5万件であり、前年比で1.1%減少しました。これは5年連続で前年を下回ったことになります。
各国の特許庁における出願件数を見ますと、米国が49万件、中国が39.1万件、韓国が16.8万件、欧州が15.1万件です。2010年の中国における特許出願件数は初めて日本を上回りました。
参考:
URL
8、失業率、改善
総務省は、7月1日、5月の完全失業率を発表しました。なお、この数字は3月の東日本大震災以降、調査実施が困難となった岩手、宮城、福島の各県を除いた数字となっています。3県が全国に占める割合は5%程度です。
5月の完全失業率(季節調整値)は4.5%であり、前月に比べて0.2%減少となりました。3カ月ぶりに失業率が改善したことになります。主な産業別就業者を前年同月比で比べますと、「医療、福祉」、「教育、学習支援」などが増加しています。一方、「卸売業、小売業」などは減少しています。
また、厚生労働省は、同日、5月分の有効求人倍率を発表しました。5月の有効求人倍率は0.61倍であり、前月と同水準です。
参考:
URL URL2
9、日銀短観、大企業はマイナス
日銀は、7月1日、6月の企業の短期経済観測調査(短観)の結果を発表しました。
それによりますと、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業製造業でマイナス9となりました。DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値です。マイナスとなった場合には「悪い」と答えた企業の方が「良い」と答えた企業の数より多くなっています。
前回、6月の調査ではDIがプラス6となっていましたが、今回はマイナスとなったものです。「自動車」で▲52、「鉄鋼」で▲21、「紙・パルプ」で▲16、「電気機械」で▲16と特に悪くなっています。
ただ、「先行き」(3ヶ月後)はプラス2であり、再びプラスに転じるという予想をしています。
参考:
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1106.pdf
10、5月の消費支出、前年同月比1.9%減
総務省は、7月1日、5月の家計調査報告を発表しました。
それによりますと、2人以上の世帯の5月の消費支出は27.6万円であり、対前年同月比で1.9%(実質)減少しました。減少は8カ月連続となります。
ただ、減少幅は3月の東日本大震災後の3月は▲8.5%の減少、4月は▲3.0%の減少でしたので、減少幅は減少したことになります。
項目ごとのマイナス幅を見てみますと、自動車関連などの「交通・通信」が▲11.3%のマイナス、「教養娯楽」が▲10.9%のマイナス、「光熱・水道」が▲5.2%のマイナスと減少幅が大きくなっています。
参考:
http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_mr.pdf
11、5月の消費者物価、2カ月連続で上昇
総務省は、7月1日、5月分の消費者物価指数を発表しました。
「生鮮食品を除く総合」の5月の消費者物価は、前月比0.1%の上昇、対前年同月比でも0.6%の上昇となりました。対前年同月比で上昇するのは2カ月連続となります。
前年同月比で上昇した主な項目は、「たばこ」が+39%、「光熱」が+20%等となっています。一方、対前年同月比でマイナスとなった主な項目は、「家庭用耐久財」が▲9%のマイナスとなっています。
参考:
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
12、中国における鉱物資源の輸出規制、WTOで敗訴
世界貿易機関(WTO)は、7月5日、中国が不当に鉱物資源の輸出規制をしているとして米国や欧州が提訴していた問題で、紛争処理小委員会の報告書を発表しました。
この報告書では、中国の主張は受け入れられず、中国の敗訴となりました。訴えでは、中国は鉱物資源について、不当に輸出制限したり輸出税をかけているとしていました。
対象の鉱物資源は、ボーキサイト、コークス、ほたる石、マグネシウム、マンガン、炭化ケイ素、金属シリコン、黄燐、亜鉛の9品目です。
中国は、輸出規制の目的は環境への配慮や天然資源の保護であるとしていましたが認められませんでした。中国は、今後上級委員会へ上訴するかどうかについて選択をすることになります。
この問題については、昨年問題になった中国におけるレアアースの輸出規制問題についても訴えられる可能性が指摘されています。
参考:
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