マイクロマシン/MEMSを取り巻く経済・政策動向のトピックを、いろいろな観点からとらえて発信します。
1、月例経済報告(9月20日)
内閣府は、9月20日、月例経済報告を発表しました。
9月の月例経済報告では景気の基調判断について、「景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、持ち直している。」としています。基調判断については、2カ月ぶりに上方修正した前月の判断を据え置きました。
「先行きについては、サプライチェーンの立て直しや各種の政策効果などを背景に、景気の持ち直し傾向が続くことが期待される。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響に加え、回復力の弱まっている海外経済が下振れた場合や為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在する。また、デフレの影響や、雇用情勢の悪化懸念が依然残っていることにも注意が必要である」としています。この表現は、前月に比べて海外経済に対して強い懸念を表したものとなっています。
また、「政府は、震災からの復興に全力で取り組むとともに、急激な円高の進行等による景気下振れリスクや産業空洞化のリスクに対応し、また、円高メリットを最大限活用するため、円高への総合的対応策のとりまとめ及び平成23年度第3次補正予算の編成を早急に行う。日本銀行に対しては、引き続き、政府と緊密な情報交換・連携を保ちつつ、適切かつ機動的な対応によって経済を下支えするよう期待する」としています。
参考:
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2011/0920getsurei/main.pdf
2、IMF、世界の成長予測を下方修正
IMF(国際通貨基金)は、9月20日、世界経済見通し(アウトルック)の改訂版を公表しました。今回の修正は前回6月の予測を修正したものです。
それによりますと、世界の実質成長率は2011年、12年とも4.0%と予測しました。前回6月の予測よりそれぞれ、▲0.3%、▲0.5%下方修正しています。
日本の成長率は、2011年はマイナス▲0.5%、2012年は2.3%としました。11年の予測は0.2%上方修正しましたが、12年は▲0.6%下方修正しました。
ユーロ圏は、2011年が1.5%の成長、12年は1.1%と予測しています。それぞれ、▲0.4%、▲0.6%下方修正しています。米国は、2011年が1.5%、12年が1.8%成長としています。それぞれ、▲1.0%、▲0.9%の下方修正となります。
新興・途上国の成長率は、2011年は6.4%、12年が6.1%の成長としています。それぞれ、▲0.2%、▲0.3%の下方修正となっています。この内、中国の成長率は、2011年で9.5%、12年が9.0%としています。それぞれ、▲0.1%、▲0.5%下方修正しました。
参考:
http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2011/02/pdf/c1.pdf
3、8月の貿易収支は8千億円の赤字
財務省は、9月21日、8月分の貿易統計(速報)を発表しました。
それによりますと、8月分の貿易収支は▲7,753億円の赤字となりました。貿易収支が赤字となるのは3カ月ぶりです。
この内、輸出額は5.4兆円であり、対前年同月比で+2.8%増となりました。対前年同月比でプラスとなるのは6カ月ぶりで、東日本大震災後初めてとなります。6カ月ぶりに輸出がプラスに転じたのは、サプライチェーンの普及が進んだ結果と考えられます。対前年同月比で増加した主な品目は、船舶(+35%)、自動車(+5%)金属加工機械(+29%)等です。
一方、輸入額は6.1兆円であり、対前年同月比19.2%増加しています。増加した主な品目は、原粗油(+40%)、液化天然ガス(+56%)等となっています。
参考:
URL
4、経済産業省の主な経済指標(鉱工業指標調査 2010年78速報分 2011年9月30日)
経済産業省は、商鉱工業及びサービス業など幅広い分野にわたって統計調査を実施しており、それらの調査分析結果について取りまとめた統計をホームページ上に公表しています。これは鉱工業製品を生産する国内の事業所における生産、出荷、在庫に係る諸活動、製造工業の設備の稼働状況、各種設備の生産能力の動向、生産の先行き2カ月の予測の把握を行うものです。8月分の概要(速報)は以下の通りです。
-回復しつつある鉱工業生産―
・今月は、生産、出荷、在庫が上昇、在庫率は低下であった。
・製造工業生産予測調査によると、9月低下の後、10月は上昇を予測している。
・総じて見れば、生産は日本大震災の影響からほぼ回復したものの、先行きについては注視する必要がある。
8月の生産・出荷・在庫動向
(1) 生産
8月の生産は、前月比0.8%の上昇と5カ月連続の上昇 (前年同月比は0.6%の上昇)となり、指数水準は93.7 (季節調整済)となった。生産の上昇に寄与した業種は、輸送機械工業、鉄鋼業、電子部品・デバイス工業等であった。品目別にみると、普通乗用車、セパレート型エアコン、駆動伝導・操縦装置部品の順に上昇に寄与している。
(2) 出荷
8月の出荷は、前月比0.3%の上昇と4カ月連続の上昇 (前年同月比は0.3%の上昇)となり、指数水準は94.7 (季節調整済)となった。出荷の上昇に寄与した業種は、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業、石油・石炭製品工業等であった。
(3) 在庫
8月の在庫は、前月比2.1%の上昇と3カ月ぶりの上昇(前年同月比は5.8%の上昇)となり、指数水準は102.8(季節調整済み)となった。在庫の上昇に寄与した業種は、情報通信機械工業、電気機械工業、輸送機械工業等であった。
8月の在庫率は、前月比▲1.5%の低下と2カ月ぶりの低下(前年同月比は6.1%の上昇)となり、指数水準は114.6(季節調整済み)となった。
製造工業生産予測調査
製造工業生産予測調査によると、9月は前月比▲2.5%の低下、10月は同3.8の上昇であった。9月の低下は、輸送機械工業、化学工業、一般機械工業等により、10月の上昇は、輸送機械工業、電気機械工業、化学工業等による。8月の実現率は▲1.5%、9月の予測修正率は▲1.6 %となった。
参考:
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/iip/result-1.html
5、8月の消費者物価、2カ月連続の上昇
総務省は、9月30日、8月の全国の消費者物価指数(2010年を100とする)を公表しました。
8月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は、前年同月比で0.2%上昇しました。これで2カ月連続して対前年同月比を上回りました。前月比でも0.1%上回っています。生鮮食料品を含む総合でも対前年同月比で+0.2%となります。
対前年同月比で上昇した主な品目は、たばこ(対前年度月比+38%)、ガソリン(同+13%)等となっています。これに対し、対前年同月比で下落した主な品目は、テレビ(同▲26%)、電気冷蔵庫(同▲26%)、家庭用耐久財(同▲13%)等となっています。
参考:
http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf
6、8月の完全失業率、0.4ポイント低下
総務省は、9月30日、8月の労働力調査(速報)の結果を発表しました。
8月の全国の完全失業率(岩手県、宮城県、福島県を除く)は、前月比で0.4ポイント低い4.3%となりました。完全失業率が低下するのは3カ月ぶりとなります。ただ、同省は、「仕事探しを一時的に見合わせる動きがあり、内容的に必ずしも改善とは言えない」としています。
また、同日、厚生労働省は8月分の有効求人倍率を公表しました。それによりますと、8月の有効求人倍率は0.66倍で前月に比べて0.02ポイント上昇(好転)しています。
参考:
URL1,
URL2
7、「模倣品の取引の防止に関する協定(ACTA)」の署名
10月1日、「「模倣品の取引の防止に関する協定(仮称)(ACTA)の署名式が東京で行われました。
本協定は、高いレベルの知的財産権保護が必要との認識が高まる中、日米がその交渉をリードしてできたものです。
本協定の交渉は、日本、豪州、カナダ、EU、韓国、メキシコ、モロッコ、ニュージーランド、シンガポール、スイス、米国の間で行われ、本年4月に協定のテキストが確定したものです。10月1日には、我が国を含む8カ国の代表が本協定に署名しました。この他、EU,メキシコ、スイスの代表も署名式に出席し、早期に署名するための準備を行うことを確認しました。
参考:
URL
8、北欧特許庁との「特許審査ハイウエイ」の開始
特許庁は、10月1日から北欧特許庁(デンマーク、ノルウエー、アイスランドによって設立)との間で特許審査ハイウエイ(PPH)の試行を開始します。
特許審査ハイウエイとは、ある国で特許権を取得することが可能と判断された出願について、出願人の申請により、別の国で簡易な手続きで早期審査を受けられるようにする制度です。
これで、我が国がPPHを締結した国・機関は16となります。
参考:
URL
9、インターネットによるトラヒック引き続き増加
総務省は、9月30日、2011年5月時点での我が国のインターネットによるトラヒック(通信量)の集計・資産を行い、その結果を発表しました。
2011年5月時点での我が国のブロードバンドサービス(FTTH、DSL、CATV及びFWA)契約者の総ダウンロードトラヒックは、推定で約1.15T(テラ:10の12乗)bpsであり、この1年間で約1.2倍となっています。また、2008年5月からの3年間で約1.9倍伸びました。
他方、ブロードバンドサービス契約者の総アップロードトラヒックは前年5月の集計から減少傾向が続いています。これは、映像や音楽コンテンツの入手方法が、対人間間(P2P)から映像配信等のWebサービスへ移行したこと等が背景となっていると考えられるとしています。
参考:
http://www.soumu.go.jp/main_content/000130485.pdf
10、9月の日銀短観、改善
日銀は、10月3日、9月の企業短期経済観測調査(短観)の結果を発表しました。
それによりますと、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業の製造業でプラス2となりました。前回6月の調査ではではマイナス9でしたので大きく改善したことになります。
業況判断指数(DI)とは、景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値です。今回の調査期間は8月29日~9月30日でした。
DIを業種別に見ますと、「自動車」「電気機械」「非鉄金属」などが改善しています。一方、「紙・パルプ」「化学」では悪化しました。
3カ月先については、大企業の製造業全体でDIが4となっており、さらに改善が進むものとみています。
参考:
http://www.boj.or.jp/statistics/tk/gaiyo/2011/tka1109.pdf