<ごあいさつ>
新年おめでとうございます。昨年のわが国経済は日経平均株価が2万円近くを推移するなど総じて回復基調にありましたが、新年に入って、中国バブル経済崩壊の顕在化、原油の大幅安の進行、欧州への大量難民移入など様々な海外リスクの高まりを受け、国内株価も続落し1万7千円を割り込んでしまい(1/18時点)、今後のわが国経済の景気見通しが不透明なものとなりつつあります。
私ども一般財団法人マイクロマシンセンターが活動するMEMS産業分野においては、国内市場規模が約1.5兆円で年率2桁の伸びが見込まれるMEMSデバイスの応用・普及が着実に進展しています。加速度センサー、圧力センサー、振動センサー、MEMSマイクロフォン等の多くのMEMSが自動車、スマホなどの身の回りの製品の中でもふんだんに使われており、今や各種製品の小型化・高機能化を実現するための必須デバイスとなっています。
さらに、最近IOT/CPS、インダストリ4.0などインターネット活用の新たなイニシアティブが盛んに喧伝されていますが、その中でMEMSデバイスの大半を占める先進センサを用いたスマートセンシングは、現実社会とIT空間を連結させ、各種センサーネットワークを展開させるための重要なツールとして注視されています。
このような状況下、私どもは様々な活動を行っております。一つには稼働5年目のマイクロナノオープンイノベーションセンター(MNOIC)の運営です。ベン チャーから大企業までMEMSデバイスを用いてビジネス化・製品化を進める様々なユーザーの試作・開発拠点として着々と利用が増大しています。
また、今後のIOT・トリリオンセンサ社会の進展を見据え、先進MEMSセンサーに自立電源、無線機能 を組み込んだメンテフリー端末ノードを構成要素とする先駆的なセンサーネットワーク(SSN:スマートセンシング&ネットワーク)の技術開発や国際標準化等にも鋭意取り組んでおります。
微力ながらもMEMS産業の発展を支援し、ひいてはわが国経済を先導する役割の一端を担ってまいりたいと思っております。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
皆さま方には以下の10大ニュースをご覧いただき、このような私どもの活動状況をご賢察いただければ幸いです。
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<10大ニュース>
(1) スマートセンシング&ネットワーク(SSN)研究会が発足。これまでのセンサーネットワークプロジェクトの成果を踏まえ、今後のIoT・トリリオンセンサー社会への対応を強化する。
マイクロマシンセンターでは、スマートセンシング及びネットワーク関連の諸課題解決、技術標準化促進及び我が国における一層の普及促進のために、関連団体(大学・企業・研究機関等)が一堂に会し、発表、討論する場を提供することを目的とする「スマートセンシング&ネットワーク研究会(SSN研究会)」(第1回研究会は来年2月頃を予定)を設置することにいたしました(研究会会長:東京大学大学院 情報理工学系研究科下山勲教授)。
そのキックオフ会合を平成27年10月1日(木)開催しました。その様子は以下のブログを参照ください。
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/10/ssn-f808.html
また、11月10日に「共通プラットフォーム標準化WG説明会」を当センターテクノサロンにて開催しました。グリーンセンサネットワークと呼ばれる、多数のセンサを配置したセンサネットワークを用いた省エネ手法の効果が実証実験を通じて確認されています。しかし、ネットワークを構成する要素間の電気・物理インターフェースについて様々な開発・採用がされ、互換や性能比較が困難な状況となっています。当WGは「センサモジュールと信号処理部」及び「自立電源と信号処理部」の接続に関する電気・物理インターフェースについて標準化を検討することが目的です。当日は本テーマについてご関心のある当センター会員企業にご出席を頂き、WGの目的や各社の注目事項につき意見交換が行われました。
(2) SSNの先鞭となったグリーンセンサ・ネットワークシステム技術開発プロジェクト(GSN、2011~2014年度)がめざましい成果を挙げて終了。NEDOの事後評価にて高い評価を受ける。
GSNプロジェクト(2011年度~2014年度)は今年3月に終了し、その成果報告会を2月27日に開催し、多数の皆様のご参加を頂きました。その様子は以下のブログを参照ください。
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/03/h27226-e931.html
この様子は日経テックオンにも紹介されました。
GSNプロジェクトについて、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事後評価分科会によるレビュー結果が12月9日NEDOのHPにて公開されました。本レビューでは、評点として開発成果が3点満点中2.8、実用化が3点満点中2.5と非常に高い評価を得ることができました。
今後、IoT時代における自立電源を用いたセンサ端末・ネットワークシステム普及を目指すこととしており、その一環として各種センサ/自立電源端末の物理・電気インターフェース、機能・性能表示方法などについて国際標準化をする運びです(平成28年度METI国際標準化事業に公募提案予定)。
詳細は以下のブログを参照ください。
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/12/nedo-6840.html
(3) 5年目に入ったマイクロナノ・オープンイノベーションセンター(MNOIC)の活動が順調に拡大。製品化が容易となる工程受託サービスも始まり、わが国産業界のオープンイノベーションに大きく貢献。
MNOICは設立から5年目を迎え、質的な変化も見えるようになってきました。当初は企業等の研究者がMNOIC研究居室に席を確保して自由に研究施設を使用する研究支援サービスユーザが多かったのですが、2015年度は、仕様書に基づいてMNOICの研究員が代行してセンサデバイス等の試作を行う研究受託サービスのユーザや、産総研の共用設備制度を利用し、指示された工程でサンプル試作を行う工程受託サービス(サンプルの所有権をユーザが持つため、有料サンプル頒布等の事業に利用できる)のユーザが研究支援サービスを上回るようになりました。わが国産業界のオープンイノベーションに大きく貢献すべく、活動をさらに展開していきます。
(4)エネ環先導研究として「トリリオンセンサ社会を支える高効率MEMS振動発電デバイスの研究(MEH)」と「究極の省エネを実現する「完全自動化」自動車に不可欠な革新認識システムの研究開発(IRiS)」の2テーマが採択され、2年間のプロジェクトがスタート。それぞれ本格研究を目指す。
平成26年度「エネルギー・環境新技術先導プログラム」のNEDO公募事業において、(技)NMEMS技術研究機構が提案した
「トリリオンセンサ社会を支える高効率MEMS振動発電デバイスの研究」の研究テーマが採択されました。その内容及びキックオフの様子については以下のブログを参照ください。
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/03/nedomems-f0b1.html
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/04/iris-f58a.html
また、同様に一般財団法人マイクロマシンセンター、株式会社デンソーおよび国立大学法人東京大学の産学連携チームが提案した
「究極の省エネを実現する「完全自動化」自動車に不可欠な革新認識システムの研究開発」の研究テーマが採択されました。その内容及びキックオフの様子は以下のブログを参照ください。
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/03/nedo-575a.html
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/04/mems-115e.html
(5)「ナノ・マイクロビジネス展2015」を盛況に開催。2016年より「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」としてリニューアルし、9月14日~16日に開催。MEMSセンサー、IoT/CPS等のビジネス交流の場として期待が高まる。
4月22日~24日に「ナノ・マイクロビジネス展2015」がパシフィコ横浜にて開催され、多数の皆様にお越しいただきました。主催者として感謝申し上げます。
開催中の様子は以下のブログを参照ください。
4月22日
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/04/2015-6815.html
4月23日
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/04/2015-2-a50b.html
4月24日
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/04/2015-a597.html
2016年には本展示会をリニューアルし、名称を「MEMSセンシング&ネットワークシステム展」として以下の要領で開催いたします。皆様のご出展・ご来場をお願いいたします。
会期:2016年9月14日(水)~16日(金)
会場:パシィフィコ横浜
オーガナイザー:株式会社ICSコンベンションデザイン
(6)「道路インフラモニタリングシステム研究開発(RIMS)」と「ライフラインコアモニタリングシステム研究開発(UCoMS)」が順調に進展し、プロジェクト2年目を迎える。さらに加速予算を獲得し、「チップスケール原子時計プロジェクト(CSAC)」の先導研究もスタート。
2014年度よりスタートした研究開発プロジェクトは、2年目に入りそれぞれ順調に進展しています。
①「道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの開発(RIMS)」(技術研究組合NMEMS技術研究機構)
スーパーアコースティックセンサによる橋梁センシングシステムの開発ではセンサの感度向上の検討や高速道路橋でのAEモニタリング予備試験等を行っています。フレキシブル面パターンセンサによる橋梁センシングシステムの開発では圧電ひずみセンサの転写技術や耐候性保護層の検討を行っています。道路付帯構造物傾斜センシングシステムの開発ではMEMS傾斜センサの温度特性改良や無線モジュールの評価を行っています。法面変位センシングシステムの開発では、屋外での基礎実験と無線メッシュネットワークの評価を行っています。共通基盤技術としての無線通信ネットワーク共通プラットフォームや高耐久性パッケージング技術についても実証や試作及び耐久性評価を進めています。これらの成果は2015年4月末にパシフィコ横浜で開催しましたナノ・マイクロビジネス展で展示・報告しました。
RIMSのホームページ
展示パネル@ナノ・マイクロビジネス展(2015.4.22-24)
プレゼン資料@プロジェクト成果報告会)2015.4.23)
②
「ライフラインコアモニタリングの研究開発(UCoMS)」(コアモニタリング研究体)
都市機能を支えるライフライン系の都市インフラ(電気、ガス、上下水道、情報、エネルギー)の安全な保全のためのセンサーモニタリングシステムの研究開発を実施するもので、ライフラインの心臓部にあたるモーター、ポンプ、コンプレッサー等の動力機械に焦点を当てたコアモニタリングに取り組んでいます。センシング・発電デバイスはプロトタイプを製作し、振動周波数と発電性能の基礎評価を終え、更なる性能向上を目指し、発電素子構造・材料の最適化を進めています。また発電デバイスの8インチウエハ製造プロセス、ウエハレベルパッケージ技術、発電デバイスとマイコン・無線回路等を集積する高耐久性センサ端末、電磁波・遮蔽物環境でも高い信頼性と低消費電力を可能にするマルチホップネットワークシステムについても順調に試作評価を進めております。これらの成果は2015年4月末にパシフィコ横浜で開催しましたナノ・マイクロビジネス展で展示・報告しました。
UCoMSのホームページ
展示パネル@ナノ・マイクロビジネス展(2015.4.22-24)
プレゼン資料@プロジェクト成果報告会)2015.4.23)
さらに、道路インフラモニタリングシステムの研究加速を目的に、無線センサ端末に搭載可能な小型で低消費電力な高精度時計としてチップスケール原子時計の適用可能性を検討する加速テーマが認可され、そのキックオフ会議が8月5日に開催されました。このプロジェクトでは、欧米で先行するチップスケール原子時計の消費電力や価格を10分の1以下とし、時刻の正確性の維持期間を10倍以上にしようという意欲的な若手研究者が集っており、これを実現するための様々な技術の芽の可能性を検討していきます
(7)MEMS分野の標準化が順調に進展。我が国提案の国際標準が2件成立、2件が審議中。国際標準化がなされた小型ジャイロについてJISを発行。今後のSSN標準化への準備を進める。
MEMS分野の国際標準化は国際電気標準会議(IEC)の分科委員会SC47Fで審議が行われています。この委員会は日本が幹事国を務めており、マイクロマシンセンターは国内審議団体を務め、円滑な審議を進めるためのさまざまな活動を行っています。2015年12月末現在、IEC/SC47F全体では発行済み国際規格は計23件で、日本提案が10件、韓国提案が13件という内訳です。日本提案の「マイクロマシン及びMEMSに関するMEMS用語(改正提案)」、「MEMS形状計測法」は国際規格が発行され、「MEMSエレクトレット振動発電デバイス」及び「MEMS圧電薄膜の特性測定方法」が審議中です。
また、IEC規格と一致する新たなJIS規格として「マイクロマシン及びMEMS-第20部:小型ジャイロ」が発行され、ジャイロの特性に関する項目とその測定法を規定した内容となっています。
(8) セミナー活動を活発に展開。先端技術交流会(2回)、MEMS講習会(2回)、海外調査報告会(1回)等それぞれ盛況に開催。
それぞれの様子は以下のブログを参照ください。
第3回海外調査報告会(1月13日)
「北米調査及び産業動向調査の取組み」、「マイクロマシンサミット2014と欧州MEMS産業技術動向」、「MEMS国際標準化に関する活動状況」
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/01/3-2e32.html
第24回MEMS講習会(2月5日)
「ロボット産業や新産業革命インダストリー4.0におけるMEMS/センサへの期待」
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/02/24-25-e060.html
第29回先端技術交流会(3月19日)
「BEANSプロジェクト研究者達の新たな研究の取組み」
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/03/29-61fd.html
第30回先端技術交流会(7月28日)
「材料技術・表面処理による MEMS 低価格化を目指して」
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/08/30-69ce.html
第25回MEMS講習会(10月22日)
「MEMS技術を利用した地域活性化/兵庫」
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/11/25-1022-f785.html
(9)知財管理センターを設置。従来のBEANSパテントショップに加えて、GSNプロジェクトの成果として特許等の知財管理も拡充。
平成27年8月1日に「BEANS技術研究センター」を「知財管理センター」に名称変更し、MMCにおける知財活動の一層の拡充を図りました。
MMCが取り組むMEMS新技術、ネットワーク技術、アプリケーション技術、環境エネルギー技術など多肢にわたる技術領域で創出される知的財産を適切に保護・活用していくことは、財団活動のみならず、我が国MEMS産業全体の継続的な成長や社会貢献のために極めて重要です。
そのため、今般、従来のBEANS技術研究センターを名称変更して「知財管理センター」とし、従来のBEANSプロジェクトで創出された特許技術の成果展開、成果普及等の活動内容に加え、MMCが関係する全ての国/NEDOプロジェクトに係る知的財産戦略活動を行う拠点として整備し、プロジェクト知財の戦略的な権利化促進、知的財産リスクマネジメントの強化、知的財産の活用を一層推進することとします。
また、GSNプロジェクトの成果として41件の発明が特許出願されました。これらのGSN特許は、センサ端末、無線、センサネットワークシステムなどのグリーンセンサネットワークシステムを構築する際の共通基盤となる領域を“プラットホーム特許”と位置付け、国立研究開発法人産業技術総合研究所と一般財団法人マイクロマシンセンターで出願・権利化を行い、また、自立電源、グリーンMEMSセンサ、システム利用・低消費電力化アプリケーションなどの領域については各テーマを担当したプロジェクト参加企業・大学で出願・権利化を行いました。
http://beanspj.cocolog-nifty.com/mems/2015/07/post-3d52.html
(10)MMC/NMEMSの業務拡大に伴い、陣容を強化。また、業務運営の効率化を図るため、メール・Webサーバーの更新、通信回線の高速化等IT環境の整備を図った。
研究開発プロジェクトに続々と取り組んでいます。「道路インフラ状態モニタリング用センサシステムの開発(RIMS)」「ライフラインコアモニタリングの研究開発(UCoMS)」に加え、2015年よりエネ環先導研究として「トリリオンセンサ社会を支える高効率MEMS振動発電デバイスの研究(MEH)」と「究極の省エネを実現する「完全自動化」自動車に不可欠な革新認識システムの研究開発(IRiS)」が開始され、さらにRIMSの加速予算として「チップスケール原子時計プロジェクト(CSAC)」の先導研究が始まりました。このような業務拡大に対処するため、陣容の強化を図りました。
また、業務運営の効率化を図るため、メール・Webサーバーの強化を実施し、通信回線についても高速化を行いました。